『週刊ヴァンガードコラム』バックナンバー 第1回

『週刊ヴァンガードコラム』

第1回『完全なる未来と、掴み取る未来』

みなさん、こんにちは!
突然始まりましたこのコラム『週刊ヴァンガードコラム』を書かせていただきます。
ヴァンガードのカードデザインならびに、開発を担当しております有限会社遊宝洞・制作の中尾でございます。
以後よろしくお願いします。
 
さてこの週刊ヴァンガードコラムでは、その名のとおりカードにまつわる小話や開発秘話、少し変わったカードやデッキの紹介など、ちょっとディープ目?に、よりヴァンガードを楽しんでいただけるコラム(になっていく予定)です。
 
記念すべき第1回は、2016年9月30日(金)発売の「運命の歯車」のGR「機械仕掛けの神 デミウルゴス」とRRR「クロノドラゴン・GG」の開発エピソードについてです。
写真01
→「運命の歯車」の商品情報はこちら!
 
私達はアニメ“カードファイト!! ヴァンガードG”の物語の中で大きな節目となるストライドゲート編、そのラスボスである明神リューズ用の切り札カードを制作していました。
 
明神リューズがその野望を達成する為に十二支刻獣達の力を利用する、というストーリーに合わせ、その切り札カードでも何らかの形で《十二支刻獣》を利用することは予め決定しており、では十二支刻獣を利用して何をするカードにしようか、と考えていく中で指針となったのはリンクジョーカー編のボスキャラ的存在、「星輝兵 Ωグレンディオス」でした。
 
写真02
 
Яユニット達を使用して「世界を終わらせる」特殊勝利のスキルを持つ、前代未聞のカード。
十二支刻獣の力を利用して「完全なる未来の実現」を求める明神リューズの切り札、という設定ですから、今回もラスボスらしく特殊勝利スキルはどうか?
という話にもなりましたが…。
 
「完全なる未来の実現」=「完全なる勝利」ということであれば、「ゲームに勝利する」スキルはぴったりです。
しかし、特殊勝利というのはある意味ゲームの到達点としては究極的過ぎて、決まってしまえばそこでゲームは終了、その「先」はありません。
 
ストライドゲート編ではクロノ君と伊吹君が明神リューズのもたらす完全なる未来を打ち破る! というゴールがありましたから、クロノ君には明神リューズの切り札カードのスキルを「打ち破って」ほしいと考えました。
特殊勝利カードを相手にする場合、「未然に防ぐ」「失敗させる」ことはできても、
そのカードを「打ち破る」ことは、それこそ更に特殊なカードを作らない限り実現できません。
 
つまり明神リューズの切り札カードは
 
・完全なる未来を実現するかのようなスキル
・十二支刻獣をコストに使用する
・ゲームを終わらせる特殊勝利のスキル以外で
・突破口を用意する
 
といった条件を全て満たしたものが相応しいわけです。
 
ではそれをどう形にしていくのか、という話になるのですが……!
 
ヴァンガードでは、過去のイメージはドロップゾーンやソウルのような目に見える確定している物、未来のイメージは山札やGゾーンのような目に見えない不確定な物を表しているような印象があります。
明神リューズの切り札をカードの効果で表現する場合、自分の山札の順番を操作して本来不確定なものを強引に確定させてしまうものが相応しいと考えました。
 
写真03
 
そうして出来上がったのが「機械仕掛けの神 デミウルゴス」です。
 
裏話ですが、テストの段階ではデミウルゴスが山札の上に積み込めるのはドロップゾーンにある全てのカードだったのです。
しかし、それではスキルの挙動自体がものすごく煩雑になるうえに、ドロップゾーンから戻したくないカードまで山札に戻してしまうのが残念でした。
なので、最終的に都合の悪いものは切り捨てる独善的な完全なる未来のイメージに、《十二支刻獣》の“十二”という数字を合わせて積み込めるのは12枚!という形に落ち着きました。
 
明神リューズの切り札カード、デミウルゴスが完成したので、次はそれを打ち破るクロノ君のカードです。
確定された独善的で完全な未来と対になるのは、不確定だけど自分で築ける力強い未来。
そんな明神リューズとクロノ君の違いをスキルで表現する必要がありました。
 
まずは、クロノ君が明神リューズの「完全なる未来」を打ち破る為のカードを作ります。
カード的に言い換えると、「デミウルゴスが積み込んだトリガー」=「完全なる未来」を崩壊させ、不確定要素に変えてしまうようなスキル。
つまりバトルフェイズ中に相手のデッキをシャッフルできるスキルを持つカードを作ることができれば完璧ですね。
 
幸い、《ギアクロニクル》には相手のデッキをシャッフルさせるスキルが幾つかありました。
相手のユニットのグレードを変化させてコールさせるもの。
そして、相手のユニットをランダムな別のユニットに変えてしまうもの。
どちらでもよかったのですが、スキルの持つ不確定性が強いほどイメージに合致していますから、相手の山札をシャッフルさせるのは、よりランダムな後者のスキルで!
これをGガーディアンに持たせれば、相手のバトルフェイズ中に動けます!
 
ということで、「時空竜 ヘテロラウンド・ドラゴン」の出来上がりです。
 
写真04
 
そして最後は、クロノ君自身の新たな切り札。
ここもやはり、明神リューズの思想と対になっている方が良いですよね!
デミウルゴスが都合のよい未来を創り上げるのならば、
クロノ君の切り札は、その逆。
自分が仲間たちと歩んだ、決していいことばかりではなかったけれど確かな過去。
それを力に変えて、未来を掴み取るカード―――
 
写真05
 
―――「クロノドラゴン・GG」です。
 
これまでに使ってきた(または使う予定の)味方のGユニット2枚のスキルを融合させるという、特殊勝利を超えるインパクトを持つスキル。
 
こうしてSG編の最終決戦を担う二大ユニット
「機械仕掛けの神 デミウルゴス」と「クロノドラゴン・GG」が完成しました。
 
さてさて、週刊ヴァンガードコラム、いかがだったでしょうか?
お楽しみいただけたならばうれしい限りです。
それでは、また来週。
 
スタンドアップ・ヴァンガード!

↑ページのトップへ

中尾 宗也なかお むねなり

さまざまなゲームのシステムデザインを手掛ける、有限会社遊宝洞にて制作を担当。『カードファイト!! ヴァンガード』では、カードデザイン・開発に携わる。

遊宝洞 中尾氏

最新の記事はこちら

↑ページのトップへ

ページの先頭に戻る