『週刊ヴァンガードコラム』バックナンバー 第10回

『週刊ヴァンガードコラム』

第10回 『勇敢、その変遷と改革』

みなさん、こんにちは。第10回となりました、週刊ヴァンガードコラムを書かせていただいております、有限会社遊宝洞・制作の中尾でございます。今週もよろしくお願いします。
 
今回はトライアルデッキ「天命の聖騎士」&キャラクターブースター「トライスリーNEXT」に収録されている《ロイヤルパラディン》のクラン能力、「勇敢(ブレイブ)」についてお話ししたいと思います。
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ブースターパック第6弾「刃華超克」で登場した《ロイヤルパラディン》のクラン能力「勇敢」は、「天命の聖騎士」「トライスリーNEXT」の制作時点でいくつかの課題がありました。
 
もともと「勇敢」は、逆境に追い込まれていたシオン君が使うカードとして考案されたものでした。アニメとのリンクとしては合致していましたが、ゲーム視点では手札が3枚以下というのは正直なところ、相当維持が難しいのです。
 
そこでまず検討したのが、「儀式」のように有効条件に数字をつけること。「勇敢4」や「勇敢5」としてみてはどうか、というものでしたが……これはダメでした。
 
確かに条件は緩和され、カードの能力は発動します。しかし手札は最も頻繁に枚数が変化するもの。ドローで増え、コールやライドで減り、ドライブで増えるのです。
 
枚数が固定されているならまだしも、このカードは「2」、あのカードが「3」、ああこっちは「5」だっけ?……これを手札で行なうと、もう数字と手札を把握する負担が大きすぎ、まったく楽しくなかったのです。
 
そこで数字の変動制はやめ、この要素は複数の側面からフォローすることにしました。
 
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1つは、単体カード能力によるフォローです。トライアルデッキ用に制作したこの2枚は、その能力を使うことでバトルフェイズ中に「勇敢」が有効になります。とにかく体験できるというアプローチはわかりやすく、またトライアルデッキ向けでもあります。
 
過去にあったいわゆる「リミットブレイク解除」にしなかったのも前述の煩雑さが理由です。《ロイヤルパラディン》のコールでリアガードが入れ替わると、数字の変動と同じことが起こってしまうのです。
 
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もう1つは全体的な方針。永続の「勇敢」能力だけを持つものは極力避け、永続能力を持つものには並行して手札を使う能力を持たせることで「勇敢に近づくか否か」の選択を取れるようにしました。
 
また多くのカードを自動能力にし、コールやアタックした瞬間に条件を満たしておけばよいとする事で、その後ドライブで手札が増えても「パワーが減って」しまうがっかり感をなくしつつ、常に手札の枚数を把握する負担の軽減も目指しています。
 
次の課題はシールド値です。端的に言えば手札が少ないと相手の攻撃を止められません。ファイトは「負けたくない」という心理が強く働くので、そういった人間的直観性という点でも「勇敢」は厳しい状態にありました。
 
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これを解消するには「スクランブル・グリフォン」のようなカードの存在が重要です。これは「超極審判」から少しづつ取り組んでおり、「エスコート・イーグル」などがその代表格です。
 
こういった「出した方が得」というカードで盤面にシールド値を確保し、手札を使っても守れるという状況を増やしています。前述の「アレクトス」が相手のターンでも動き、かつカードが引けるのはこの要素も持っているためです。
 
もちろん退却されてしまうリスクはありますが、「手札を使っても損をしない、むしろ得なことが多い」という「“勇敢”な行動に対するリターン」なくしては「勇敢」は成立しません。
 
このアプローチは長期的にやってこその効果が出てくるものなので、今後もこういったカードを様々に作っていこうと考えています。
 
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ガード系のカードも同様です。相手のターンは自然と手札を使うのでやや障壁は低いのですが、ここでも「勇敢」のみを持つわけではなく、ファイター自身が「勇敢」まで行くかどうかを選択し、出力を決定できるようになっています。
 
そして最後の問題は、牽引役となる看板カードの不在でした。
 
以前のコラムでなんらかのシステムを作る際、デッキが組みたくなるリーダー的存在カード、「オピニオンリーダー」の存在がとにかく重要であるということをお話ししました。
 
この「トライスリーNEXT」が「勇敢」の「オピニオンリーダー」を改めて擁立するチャンスなのです。今回検討した要素をすべて盛り込み、さらに存在感のあるもの。もちろんGユニット以外にあり得ません。
 
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そうして作成したのがこの「神聖竜 ブレイブランサー・ドラゴン」です。
 
自動能力によるパワー強化は「勇敢」に合い、コールもコストではなく効果で捨てるため、遠慮なく全力コールして全力アタックできます。そして最高効率で使用すると、自然と呼んできた「勇敢」ユニットたちの能力も十全に機能するという仕組みです。
 
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『手札が無いので捨てるコストも無い!』まさしく切り札に相応しいカードで、きれいに決まった時のパワーは絶大です。
 
すさまじくピーキーなカードですが、再起を図る「勇敢のオピニオンリーダー」に無難なカードを作っても印象にさえ残らないでしょう。勝利を掴むためなら手札をすべて使ってでも――その果敢な精神こそ、「勇敢」が誇るべき神髄なのですから。
 
さてさて、週刊ヴァンガードコラム、いかがだったでしょうか?お楽しみいただけたならばうれしい限りです。
よろしければ、是非Twitterなどで感想やご意見などをつぶやいていただけますと幸いです。

それでは、また来週。
スタンドアップ・ヴァンガード!

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中尾 宗也なかお むねなり

さまざまなゲームのシステムデザインを手掛ける、有限会社遊宝洞にて制作を担当。『カードファイト!! ヴァンガード』では、カードデザイン・開発に携わる。

遊宝洞 中尾氏

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