『週刊ヴァンガードコラム』バックナンバー 第22回

『週刊ヴァンガードコラム』

第22回 『使い手とカードのお話』

みなさん、こんにちは!第22回となりました、週刊ヴァンガードコラムを書かせていただいております、有限会社遊宝洞・制作の中尾でございます。今週もよろしくお願いします。
 
さて今回は、現在動画配信中のアニメ「ヴァンガードG NEXT」20話にて「NEXT」初ファイトお披露目となった蝶野アムちゃんの《グランブルー》を、3/3発売のキャラクターブースター第3弾「月夜のラミーラビリンス」のカードを交えつつご紹介していきたいと思います。
 
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キャラクターブースター第3弾「月夜のラミーラビリンス」の商品情報はこちら!
 
《グランブルー》はメガラニカに属していますが、メガラニカだけに留まらずクレイ全域の海を荒らしまわる、不死者たちの海賊連合です。ゲームでは不死者の象徴ともいえるドロップゾーンを使ったギミックが得意で、その多彩さは他のクランの追随を許しません。
 
海賊「連合」でありクランですからある程度は組織図があり、現在はそのトップに「ナイトミスト」が就いているようですが、そこは天衣無縫の荒くれ者たちが集まる《グランブルー》。一寸先のことや実際のところはどうなるかわかりません。
 
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そんな《グランブルー》でも指折りの海賊団、「夜薔薇(ナイトローゼ)海賊団」の頭目であり、ラミーラビリンス蝶野アムちゃんの分身ユニットが彼女、「ナイトローゼ」です。
 
ドロップゾーンを使う《グランブルー》のユニットたちの中でも、シンプルかつ強力な「ストライドスキル」を持っている彼女ですが、「月夜のラミーラビリンス」で新たな姿として収録することが決まりました。
 
しかしその開発にあたり、彼女にはいくつか課題があったのです。
 
その一つがクラン能力、「亡霊(ホロウ)」。これはリアガードとしてコールされた時に、ターン終了時に退却することと引き換えに様々な効果を得るという、《グランブルー》の特性にもよく合う能力です。
 
せっかくのクラン能力ですから、もちろん「月夜のラミーラビリンス」の看板である新たなナイトローゼにもぜひ持ってほしいところです。ところがこの「亡霊」、能力の性質上ヴァンガードに持たせづらい能力なのです。
 
リアガード専門の能力にするという手がなかったわけではありません。《グランブルー》はその特性上、グレード3をリアガードとして配置する機会も多く、それでも十分強いユニットになりそうですが……それではアニメの中でアムちゃんが「新ナイトローゼ」にライドする理由があまりにも希薄になってしまいます。
 
そこでテストプレイ時の彼女は、ブースターパック第10弾「剣牙激闘」収録の「狂帝竜 ガイアデスパラード」が持つジェネレーションブレイク能力のような、“分岐”する能力を持っていたのですが……ドロップゾーンや「亡霊」を絡めて分岐すると今度はテキストボックスの大きさが足りない!
 
また実際のところ分岐させても、《グランブルー》の特性も相まって明確な差異が出るシチュエーション(とテキストボックス)はかなり限られていました。そこで最終的には「ストライドスキル」+ややリアガード寄りのヴァンガードサークル/リアガードサークル能力に落ち着いたのです。
 
というようなことがありつつも無事「亡霊」持ちの分身ユニットとなった「新ナイトローゼ」、次の議題は……そのカード名でした。
 
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“名前”というものは非常に重要で、力のあるものです。例えば条件系のクラン能力にしてみても「アルトマイルのブレイブ!!」と「手札が3枚以下なのでアルトマイルの能力発動!!」ではキャラクター性の付き方に大きな差があります。
 
ユニットの場合、特に「ナイトローゼ」の場合はアムちゃんとの対比も大事な要素です。そしてアムちゃんは前シーズンにおいて、とても重いものを背負うことになりました。「NEXT」で時こそ経ていますが、そこをないがしろにするわけにはいきません。
 
とは言えいくらアムちゃんが重い十字架を背負っているからといって、それを「新ナイトローゼ」にがっちり盛り込んでよいのでしょうか。もちろん海賊は必ずしも善なる存在ではありません。しかし、極論すればナイトローゼ側にはアムちゃんの十字架を背負う必要性は無いのです。
 
そしてアムちゃん本人も罪の意識に苛まれつつも、全力で前向きに進むと決意しています。奇しくも……本当に偶然なのですが、この“名前”と使い手の「過去」「現在」「未来」における構造は、シオン君の「勇敢(ブレイブ)」でも似た状況が起こっていたのです。
 
「勇敢」は企画段階の仮名では「逆境」と呼ばれており、確かに(その時の)シオン君の置かれている状況と条件がよくマッチしていて、「逆境」は相応しい名前であるかと思われていました。しかし、ユニット側の状況や「未来」での話はどうでしょうか。
 
その能力を持つ《ロイヤルパラディン》は何か大変な「逆境」に置かれているのでしょうか。そしてシオン君のカードが出続ける限り、その“ロイヤルパラディンの逆境”は続くのでしょうか。シオン君の「逆境」だって、永遠に続くわけではありません。
 
「逆境」は素晴らしい名前でしたが、シオン君と《ロイヤルパラディン》の未来を見据えて「勇敢」となりました。「蝶野アム」と「ナイトローゼ」も同じく未来を見据えた“名前”にしなければ、いつまでもいつまでも、二人に影を落とし続けることになりかねません。
 
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そこで一字に「影」を使いつつ、夜であっても明るいもの……というイメージで出来上がったのが「星影の吸血姫 ナイトローゼ」。彼女が本来持つべき快活なイメージと、素敵なイラストにふさわしい“名前”になったのではないでしょうか。
 
でもこれだけでは、足りないですよね。前述のとおり、アムちゃんは事実上ここが「NEXT」初お披露目。前シリーズであれだけのことをしたわけですから、「その辺どう考えてるの」というのは気になりますし「蝶野アム」としても避けてはいけないところ。
 
これをユニット側、カード側でフォローアップできる要素もまた、ユニットの“名前”でした。それが――
 
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――今回のGR、「贖いの海賊王 ドラクート」です。
 
“贖い”という言葉は非常に重く、ナイトローゼにつけることはできませんでした。しかし別のユニットにつけることはできます。こうすることで彼自身は“何かを贖っている”のではなく、“誰かに贖いを求める”存在、畏怖される存在として位置づけできます。
 
そして「超越」によってそのドラクートの力を借りる「ナイトローゼ=蝶野アム」。この構造なら、アムちゃんの状況をしっかり踏まえつつ、二人の「未来」に可能性を感じられるものになって……くれているのではないでしょうか。
 
さてさて、週刊ヴァンガードコラム、いかがだったでしょうか?お楽しみいただけたならばうれしい限りです。
よろしければ、是非Twitterなどで感想やご意見などをつぶやいていただけますと幸いです。

それでは、また来週。
スタンドアップ・ヴァンガード!

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中尾 宗也なかお むねなり

さまざまなゲームのシステムデザインを手掛ける、有限会社遊宝洞にて制作を担当。『カードファイト!! ヴァンガード』では、カードデザイン・開発に携わる。

遊宝洞 中尾氏

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